病院再整備事業(外来機能強化棟)の延期について

 当院は、昭和58年4月の開設以来、40年以上にわたり、地域の皆様に支えられながら医療を提供し、「すべての患者さんに安心を」という理念のもと、山梨県で唯一の特定機能病院として、地域医療の充実と発展に努めております。
 この長い歩みの中で、施設の老朽化や狭隘化といった課題が徐々に顕在化したことを受け、平成25年から病院再整備事業を段階的に進めており、現在は「外来診療棟」の整備を残すのみとなっております。

 しかしながら、当院をはじめとする全国の国立大学病院は特定機能病院として、高度・先進医療の提供、医師や医療人材の育成、医療技術の研究・開発といった公益性の高い役割を担っております。これらの取り組みは、必ずしも採算性が高いものではなく、経営面での負担が大きいのが現実です。
 加えて、近年の人件費や物価の上昇、新型コロナウイルス関連補助金の終了などにより、費用が増加する一方で、診療報酬などの収入が実態に追いつかない状況が続いております。こうした構造的な課題の影響は全国的にも深刻であり、令和6年度には、全国42の国立大学病院のうち29病院が赤字(総額285億円)という報告もなされています。

 当院においてもこのような厳しい状況は同様であり、令和9年10月の完成を目指していた「外来機能強化棟」の建設について、建築資材や人件費など建築費用の著しい高騰が重なり、財源確保の見通しが立たないことから、一旦延期する決定をいたしました。
 この度の決定により、県民の皆様のご期待に沿えない結果となることを心苦しく思っております。
 今後も、山梨県唯一の特定機能病院として、安全で質の高い医療を安定的に提供し続けられるよう、職員一同が力を合わせて地域医療のさらなる充実に取り組んでまいります。何卒、変わらぬご理解と温かいご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

                                  山梨大学医学部附属病院
                                    病院長 木内 博之

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