産前産後ウェルビーイングセンター

センター長挨拶

 令和4年度より第2代センター長を勤めています。産婦人科講座の平田前教授とともに作り上げた当センターは山梨県唯一の妊産婦のメンタルヘルス医療機関であり、診療はもちろん、医療者の臨床教育を担います。
 マタニティーブルーズや産後うつはその定義も治療法も未だ曖昧な点があります。一般のうつ病との相違があるのかという臨床疑問を抱いた私はまず、専門外来を作って診療と研究を始めました。時を同じくして厚生労働省は全妊産婦にエジンバラ産後うつ自己評価票(EPDS)を用いたスクリーニングを指示しましたが、実際に当センターを受診した母親の精神症状発症をこのEPDSは半数程度しか予測していませんでした。そこで私は、産後うつやマタニティーブルーズをより正しく評価出来るツール・方法の開発と、周産期および産後1年間を継続的に支援できる体制の構築を当センターの命題と致しました。
 令和5年6月には産後ウェルビーイングセンターから産前産後ウェルビーイングセンターと改称し、周産期から産褥期について産科や新生児科(NICU)ならびに薬剤部とのチーム医療を強化しました。母親やその家族のメンタルヘルス支援(薬物療法を含む)を包括的に行えること、あるいは時に胎児・新生児を亡くした親の心理支援が行えること、これらの医療拠点であるために尽力いたします。みなさまのご理解とご協力をお願いいたします。

山梨大学医学部 産前産後ウェルビーイングセンター 石黒浩毅

センター紹介

 周産期の母子を守ることはとても重要なことであり、令和3年2月に開設された当センターでは、精神科医と公認心理師(臨床心理士)および看護師を中心に、産科医や小児科医、助産師、社会福祉士らと連携しながら、産後の不安やうつに悩む母親とその夫、ご両親らの様々な相談に応じます。
 産後まもなくして多くのお母様たちが体験するマタニティーブルーズは産後1ヶ月以内に自然に解消されることが多いのですが、その1割程度の方が産後うつ病へ移行します。さらに産後うつ病の多くは産後3から6ヶ月にマタニティーブルーズとは別に発症します。しかし育児と家事に追われているお母様方は自分自身を省みる余裕を無くしており、気持ちや身体の辛さに目をつぶってしまうことが少なくありません。悩まれていることを周囲から気づかれない方も多いのです。そしてこのコロナ禍により、育児をする母親の苦悩はさらに増え、センター受診者数は増加傾向にあります。
 当センターでは母親が暮らす様々な生活・育児事情に寄り添って支えることが大切と考えており、周産期の母親およびその夫のこころの不調についての正しい医療情報をご本人・家族や地域支援にあたる医療者、そして広く市民へお伝えしていくための活動をいたします。山梨県の母子が健やかに過ごせる保健・医療が全国に誇れるものとなりますよう、皆様に求められる医療を提供したいと思います。
 ご自身またはご家族よりご心配のある方は、皆様を担当している市町村保健師へ当センターへの予約をご依頼ください。

具体的な診療内容

以下のような不安や悩みの軽減を図ります。

  1. 産後に経験する気持ちのつらさには育児に関する不安(赤ちゃんをかわいく思えない、誰にも触らせたくないなど)
  2. 自分が他の母親と同様にちゃんと赤ちゃんを育てられているか不安
  3. 夫や親との育児に対する考え方の違いや分担のあり方に関する不満や不安
  4. 赤ちゃんの成長に関する不安

 産後のお母さんたちは赤ちゃんのために時間も体力も精一杯使わなくてはいけないと頑張っています。それに悩むこと自体が自分自身を責めることとなり、医療者へ相談するというと少し後ろめたいイメージを抱くかもしれませんが、センターのスタッフ一同、最新の周産期メンタル医療の情報をふまえた懇切丁寧な説明と最善の医療をご提供したいと考えております。今まさに育児をしているみなさん、これから出産するにあたり不安を抱いたみなさん、いずれもご相談に来ていただいています。

また、大学病院としてさらなる周産期医療の発展と改善のために、新たな医療技術の開発も行っています。

診療日と問い合わせ先

完全予約制(初診・再診)

 木曜日 10:00~15:00(産前産後ウェルビーイングセンター)※第三木曜日を除く 
 場所は精神科の外来ですが、ゆとりを持ってご相談に乗れるように時間配分をしています。紹介患者のみの受付となっておりますので、当院にてご出産の方は当院産科助産師まで、他院でご出産の方は市町村の母子担当保健師に当センターの予約をお願いしてください。
 なお、診療は保険診療(通院精神療法など)にて行うものであり、別途心理士によるカウンセリングについては当院が定めるカウンセリング料をいただくことを、あらかじめご了承下さい。

研究について(任意参加)

当センターでは設立当初より以下の研究を進めてきており、これらの検査が産後うつのスクリーニングに有効性がある可能性を既に見出しております。産後うつ診療における補助的指標として、またさらなる精度の向上を図るため、以下の研究にご参加をお待ちしております。

じいじばあばによる評価票MMSPについて
 エジンバラ産後うつ評価票(EPDS)は国内外で広く用いられているスクリーニング方法ですが、自己評価である限り、ただしく産後うつを評価できていない母親がいることが知られています。そこで育児する母親を見守る親御さんに客観的評価をしていただく質問票を開発しました(特許申請済み)。EPDSと併用することによりスクリーニング精度の向上を図ろうとするプロジェクトです。


血液バイオマーカーPEA、CNR2遺伝子多型について
 自己評価方法であるエジンバラ産後うつ評価票(EPDS)における偽陰性、つまりお母さんが辛さを意図的あるいは無意識に隠してしまう(がまんしてしまう)ことに対して、血液検査という客観的指標を開発し、併用することによりスクリーニング精度の向上を図ろうとするプロジェクトです。

外来診療予定表

スタッフ紹介

役職 氏名 専門領域 専門医

特任教授(センター長)

石黒 浩毅
いしぐろひろき
専門領域:精神神経医学、周産期メンタルヘルス、臨床遺伝学、生命倫理学、人類遺伝学 専門医:日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会臨床遺伝専門医(指導医)、
精神保健指定医、
日本精神神経学会専門医(指導医)、
日本医師会認定産業医、
精神腫瘍都道府県指導者、
難病指定医

特任准教授

奥田 靖彦
おくだやすひこ
専門領域:周産期医療、産婦人科一般 専門医:日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会臨床遺伝専門医、
日本産婦人科学会専門医、
日本周産期・新生児医学学会周産期専門医、
日本産婦人科学会指導医

助教

小林 慶太
こばやしけいた
専門領域:精神科臨床一般 専門医:精神保健指定医、
日本精神神経学会専門医(指導医)

講師

小鹿 学
こじかまなぶ
専門領域:児童心理学、小児救急医療 専門医:日本小児科学会専門医・指導医
公認心理師

看護師

小松 未奈
こまつみな
専門領域:看護学 専門医:看護師、
CGMC

公認心理師(臨床心理士)

光城 綾子
みつしろあやこ
専門領域:心理学 専門医:公認心理師(臨床心理士)
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