遺伝子疾患診療科
診療科長挨拶
2022年5月、山梨大学にて6年ぶりに遺伝医学を専門とする講座が設置されることとなり、附属病院では遺伝子疾患診療センターのコア診療科として活動をすることになりました。主に出生時および小児期に診断と治療が行われてきた遺伝子/染色体疾患のクライエントは小児外科等の治療技術の向上により成人期を迎えるようになり、新たな医療や社会的支援が検討されるようになったこと、化学療法の選択および遺伝性腫瘍に対するサーベイランス計画といったがんゲノム医療が実装されたこと、出生前遺伝学的検査を用いて生殖医療が拡大したこと、精神疾患を含めた多くの疾患にも遺伝相談が求められるようになったこと、など新たな時代の求めに応じたものです。
遺伝カウンセリングとは遺伝子疾患についての医学的情報を提供し、クライエントが自ら問題解決を出来るように支援を行うことですが、これまでの遺伝医療では不十分とされたことがあります。たとえば遺伝子/染色体疾患クライエントには神経発達症が認められることが多く、学童期からAYA世代まで継続的な精神科医療が求められています。遺伝性腫瘍や生殖医療では不安や倫理的課題での葛藤が生じます。私は全国で11名しかいない精神科専門医である臨床遺伝専門医のひとりとして、心理支援を含めたクライエントの全人的ケアを我々のチーム医療にて実現します。全国でもユニークな遺伝医療を構築して参りますので、何卒よろしくお願いいたします。
山梨大学医学部 遺伝子疾患診療科 石黒浩毅
診療科紹介
当科は遺伝子疾患診療センターのコア診療科として、希少難病や精神疾患など多因子疾患、遺伝性腫瘍を対象とした遺伝医療を行っています。すなわちクライエントが疾患の症状・予後や血縁者への遺伝について悩みや不安を抱えている場合に、正確な遺伝医学的情報を提供し、身体機能や精神機能の低下に対する医療と社会資源等を提供する遺伝カウンセリングを実施します。当院はがん診療拠点病院およびがんゲノム医療連携病院の指定を受けていますが、主治医によるコンパニオン診断やがんゲノムパネル検査(CGP)の実施から遺伝性腫瘍(がん)が疑われる場合、確定診断や未発症血縁者の遺伝学的検査には当科が遺伝カウンセリングを行う必要があります。
最先端医療には遺伝学的検査が益々普及し、クライエントは遺伝に関連した様々な不安や倫理的課題に向き合うことが増えました。従来の小児遺伝医療の他にも、成人期を迎えた希少難病、出生前遺伝学的検査、遺伝性腫瘍、未だ原因遺伝子が特定されていない精神疾患などのクライエントを対象に、全人的苦痛を早期に発見し、的確なアセスメントと治療、そして心理支援を行うことによって苦しみを予防・軽減する、遺伝医療における緩和ケアのパイオニアを目指しています。県内唯一の臨床遺伝教育機関として、地域保健師や院内各診療科医師の教育とチーム医療実践に主導的な役割を担います。
対象疾患について
- 染色体疾患(ダウン症、22q11.2欠失症候群、ウィリアム症候群、不育症など)
- 遺伝性疾患(エーラス・ダンロス症候群、マルファン症候群、プラダー・ウィリー症候群、シャルコーマリートゥース病、痙性対麻痺、遺伝性QT延長症候群、ファブリ病など)
- 精神疾患(統合失調症、双極性障害、うつ病など)
- 急激退行症候群(ダウン症、22q11.2欠失症候群など)
- 遺伝性腫瘍(遺伝性乳がん卵巣がん症候群、リンチ症候群など)
- 出生前遺伝学的検査(産科との連携、心理支援を担当)
スタッフ紹介
役職 | 氏名 | 専門領域 | 専門医 |
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特任教授(科長) |
石黒 浩毅
いしぐろ ひろき
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専門領域:臨床遺伝学(精神疾患、がんゲノム、小児・AYA世代)、生命倫理学、人類遺伝学、精神神経医学 |
専門医:日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会臨床遺伝専門医(指導責任医) 精神保健指定医 日本精神神経学会専門医(指導医) 日本医師会認定産業医 精神腫瘍都道府県指導者 難病指定医 |